ココロの始まり
「で、外にあるラインはダブルス用のライン」
「なるほど・・・
コートに2人も入るのに、シングルのラインじゃ狭いもんね」
話しは弾み、いつの間にか向かい合うように座り、
中央に置かれた小さなノートに、テニスコートが描かれ、
越前リョーマによるテニスルール説明が行われていた。
「いっぱいラインがあるから難しいそうに見えたけど、
説明を聞くと納得できるね・・」
嬉しそうに説明してくれる越前を見ながら、
邪念と死闘を繰り広げ、なんとか話す事を理解し、
頷けば、
「そんな難しく考える必要ないんじゃん」
変わらぬ声とリズムに
「そうなんだけど・・・
なんと言いますか、仕切りが高いと言うか・・
ブルジョワな感じが、庶民心を近づけさせないと言いますか・・」
イメージがね・・・・
苦笑しながらの言葉に、
「イメージねぇ・・」
理解出来ていないのか、ただ呟かれただけの声に
「でも、面白そうだよね」
笑顔で話を降れば、
「当たり前じゃん」
生意気な言葉と、自信たっぷりの表情に
「女テニの見学に行こうかな・・」
好奇心に導かれるまま、出た言葉は
荒々しく開かれた音にかき消された。
「やっぱり、ココに居たか」
声を掻き消してしまう程の音に、ノートから視線を外し、
ドアへと映した先には、両手一杯にパンを抱え込んでいる
男子生徒の姿が見えた。
「桃センパイ・・」
無意識に零れ落ちた言葉が耳に入り、
改めて意識を持ってみれば、まさしく桃城武が立っており、
「お、なんだよ。
仲良く昼メシか?」
スミにおけねぇーな、スミにおけねーよ
聞きなれた声に、
3度目の声の出ない驚きを体験するが、
本当に良く食べるんだ・・・
冷静になるのも早くなってきた。
大またで近寄り、越前の横に腰を下ろせば、
手に持っていたパンを床に置き、
「何、話してたんだよ?」
肘で越前を突付きながらも、1つ目のパンの袋を開けだす。
「別に・・・」
冷やかしの含んだ言葉と表情に、
無愛想に言葉を返せば、
「なぁ、アンタ。
コイツと何やってたんだ?」
へと問いかけ、
「テニスのルールを教えてもらっていたんです」
先程まで使っていたノートを見せれば、
「また、変わった事聞いてんな」
食べながら告げられる言葉に、
「テニスって面白い?
て、聞き出したら、いつの間にかルールまで聞いてて・・」
苦笑しながら、手に持っていた小さなノートを、
ブレザーの胸ポケットに入れれば、
「にしても、生徒手帳にコートを書かなくても
良いんじゃなねぇか?」
2個目のパンの袋を開けながらの言葉に
「描いて貰って説明してもらった方が解りやすいと思って・・・」
先程と変わらない表情で返事を返す。
「ま。
確かに、書いた方が解りやすいかもな」
「説明も解りやすいし、
何を聞いても答えてくれるから、つい次から次に質問しちゃって・・」
頬に手をあて、微笑んだ後、越前に視線を移し
「すごく解りやすかったです。
ありがとうございます」
座りながらも、頭を下げれば、
「大した事じゃないし・・」
目を大きく開けた後、ふぃと視線を逸らし
そっぽを向いてしまった。
目を大きく開けた後、フィと視線を逸らし
そっぽを向いてしまった。
テレてる・・可愛い
マジマジと見つめていれば睨まれるものの、
見つめ続ければ、ムッとした表情に変わる。
良く見ると、コロコロ変わる表情が子供らしさを引き出していた。
原作やアニメだと試合を中心として進んでくから、
中々私生活て、見れないもんね・・・
貴重な体験だなぁ。
ありがとう、私。
ありがとう、私の煩悩!
心の中で、太陽に向かって感謝の祈りを捧げた。
「お前ら、どういう関係なんだよ?」
黙々とパンを食べていた桃城の質問に首を傾げ、
「えっと・・・私が、ゴハンを食べながら、
目標と意気込みを決めていたら、いつの間にか声に出でいたらしく、
寝ていた彼を起こしてしまって・・・
あ、自己紹介がまだでしたね。 です」
深々と頭を下げれば、
「初対面なのか?」
隣にいる越前へと話しと視線を向ければ、無言で頷いた。
「そういゃぁ、今日転校生がくるって騒いでたなぁ」
アンタがそうか。
聞こえてきた言葉に、
ウワサが流れてたのか・・
と、言うよりこんな時期外れの転校で
ウワサが出なが方がオカシイか・・・
自分の心の中で納得し、
曖昧な笑みを浮かべていれば、
「俺は桃城武。
で、コイツが越前リョーマ」
親指で刺され、
「ども」
軽い挨拶と会釈に、
「越前くんは1年生?
私、2年生なんだけどヨロシクね」
仕事用に作り上げた笑みでの挨拶にも、素っ気なく
「ヨロシク」
返され、
嫌われちゃったかなぁ・・・
暗くなる気持ちをふっ切る為に、
まだ、パンを食べている桃城に話しを振ってみる。
「桃城くんも、テニスするの?」
自分も同じ様に残っていた焼きそばパンのラップを剥がせば、
「おう!
青学は強いぜ」
自信たっぷりの頷きと声に
「テニスって、楽しい?」
越前と同じ質問をすれば、
「面白しろいぜ」
笑った顔に、
「良いなぁ・・・」
羨ましくなり、小さな声で本音が零れ落ちた。
溜め息を落とし、前に座っている2人を見れば、
不思議そうに見つめられ、
「今まで、何かを一生懸命する。
なんて事、した事無くて。
だから、この機会に何か打ち込めるものを探そうかな・・
そう思って」
苦笑しながらの言葉に、桃城と越前が顔を見合わせ、
頷きあった。
その後は、どんなクラブがあるとか
学校の雰囲気、学校行事など
他愛も無い話しをしながら、
残りの焼きそばパンを手に持つも、満腹のお腹には
食欲が無く、手の中で玩具になってしまっていた。
「食べねぇのか?」
持て余してしまっているパンの存在に気が付いた、
桃城の言葉に、
「お腹が一杯で・・・」
広げていたラップを再び包み直し、
「越前くん、食べる?」
パンを差し出しながら聞けば、
1瞬、驚く顔をし、
「先輩のなんだから、先輩が食べれば」
普段と変わらないリズムに、
「半分なら食べれそうなんだけど、
全部は無理かなぁ・・
越前くんが良ければ手伝って欲しいな」
何度目か苦笑交じりの言葉に、
「いいスよ」
是の返事が返り、
手で半分に訳、少し大きい方を越前に渡した。
「ども」
小さく頭を下げ、渡された焼きそばパンを口へと運び、
互いに数口で食べ終えれば、予鈴が鳴る5分前だった。
「じゃ、私、戻るね」
越前くん、桃城くん、ありがとう。
立ち上がり、笑みと礼をし、ドアに向かおうとするが、
「クラブ見学をすんなら、
男テニも見に来るの?」
越前からの問いかけに、
「男テニ?
入部できないから、見に行く気はないけど・・・」
突然の言葉に、首を捻り返事を返せば、
「関係ないじゃん。
見に来てよ」
「う・・うん。
じゃ、見に行くね」
いつになるか、解らないけど・・・・
曖昧な約束をし、
またね。
手を振り、教室へと戻って行った。